職務質問③その5

2017/10/18

職務質問③その4からのつづき

パチンと鍔と鞘がぶつかり新たな緊張の糸が張り詰め、「ちょっとちょっと、うろちょろしない!中に入ってて。」ごま塩刑事は、左手で日本刀を鞘ごとつかみ、右手は私を指さして1、2歩前に出ました。

ごま塩刑事の前進圧力により1、2歩下がると緊張の糸に引っかかったのか私の目線が30cmほど揺れながら急落し、左のサンダルが弧を描き私の右側3mほど飛んでいきました。

かろうじて転倒を免れた私が這うようにしてサンダルを拾いに行くと、何か気配を感じ、顔を右横に向けると私の隣の取調室のドアが開いていました。

スチール机の奥に、耳が隠れるくらいの長髪30才位の男が机に両肘をついて下を向いていました。

男の後ろに覆い被さるように40才代長身短髪男。私に背中を見せて座っている40才代パンチパーマ男。スチール机の左側にたばこを吸いながら立っている30才代腕の太い男。どうやら、壁以外の3方を囲んでいる3人が私服刑事で、長髪30男を銃刀法違反で検挙連行してきたようです。そこには別の緊張の糸が張り巡らされていました。

すごいものを見てしまった私は、サンダルを手に持ったまま、とっさに固まったふりをしてそのまま固まっていました。

「ほらっ!早く入れ」左側からの緊張の糸に馴れ始めた私は、はっとしたふりをしつつ、そのまますごいものから目を離さずサンダルを履いてから、さらに45度右回転して自分の部屋に戻りました。

自分の部屋に戻ったら左側の壁に垂れ下がっている黒い布きれが目に入りました。

私は、黒い布きれをめくりあげました。

ガラスの向こうの右側に座った長髪男と長身短髪刑事、左側にパンチパーマ刑事、正面に腕太刑事がいました。腕太刑事がこっちに向かっていたので、(ヤバイ、覗いてるのバレバレやん)と思いましたが、腕太刑事とは全然目が合いません。

どうやら向こう側からは私の姿は見えていないようでした。

すると係長が私の部屋に入ってきました。係長は「そう。いろいろいるんだよ」と覗き男の私をとがめませんでした。

黒い布きれを持ったままの私が「これっ?」と言うと「そうだよマジックミラーだよ」と係長は教えてくれました。

いわゆる面通しなどで使うのでしょう。

日本刀やら、本物の犯人やら、マジックミラーやらのオンパレードで刑事ドラマは続行中でした。

※その6につづく

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