

2017/09/25
職務質問③その2からのつづき
自身の作業を終えた中年係長(おそらく警部補)は、「ちょっと、こっちに来てくれるかな」とだだっ広い1階フロアの中央部分をカウンターに囲まれた内側から、カウンターの外側の扉の開いた部屋を指さしました。
促されてその部屋に入ると、そこは、3畳くらいの長方形の狭い部屋で、奥行きから真ん中辺り左の壁に接するようにスチールの机があり、その机の上の壁に小窓を隠す黒い布きれが垂れ下がっている素人にもわかる取調室でした。
係長は「そこに座って」と私を奥のパイプ椅子に座るよう促し、自身は入り口側のパイプ椅子に座りました。もはや逃げられません。
「外国人登録証不携帯だって。」「はい」
「一応法律違反なのは知っているね。」「はい」
「じゃあ、これに始末書を書いて貰うけど、いいね。」と係長は白紙のわら半紙を机の上におきました。私は、「始末書だけで済むんですか」と横向けに足を組んで精一杯虚勢を張りました。
「済むよ。これだけ書いてね。形だから。」私、「これ書いて提出で何もかも終わりですか」と念を押しました。
係長「そうだよ」。ちょっと安心した私は、「わかりました。どう書けばいいんですか」と椅子にきちんと座り直しました。
「これから言うように書いて。ええっと、最初に『始末書』。行を変えて、『私は、昭和62年○月○日午後11時○○分ころ、東京都杉並区上高井戸1丁目付近道路上にて、大学の同級生何々君(「ここは友達の名前を入れて」)と、それぞれ自転車にて新宿を目指しツーリングしていたところ、』・・・」と始まりました。
が、私は、そんなところから事細かに口述筆記していたらいつになるか予測がつかず、「ちょっと待ってください。(不携帯は)認めるのは認めますが、この文章は私が書くんでしょ。私の言葉で書きますよ。」と外国人登録証不携帯の事実を抽象的に簡単に書けば済むと素人の抵抗をしました。
係長は「そんな訳にはいかないよ。ちゃんと作法があるんだから」と拒絶を許さない怖い顔になりました。
係長の雰囲気から押しても無理だなと悟った私は、観念して言われたとおり書き始め、書き終わったら30分以上は経過していました。法学生、実務の洗礼その2を浴びました。
※その4につづく