職務質問③その7(完)

2017/11/23

職務質問③その6からのつづき

アパートへ行く道中のパトカー内では道案内以外の会話はありませんでした。

本件の経緯について、また、一から説明するのが面倒で、聞くな聞くなオーラを出したからでしょう。その反面、私は初めて見るパトカー内の装備に内心興奮しっぱなしでしたが機動隊ABに興奮状態を気取られないよう平静を装っていました(たぶん興奮状態はばれていたのでしょう)。

 

20~30分走行したらアパート前の空き地に到着したので、すぐに私は後部座席左のドアを開けようとしましたがドアは開きません。被疑者が逃げられないようにするチャイルドロックです。法学生、実務の洗礼その4を浴びました。

機動隊Bが助手席から降りて後部左ドアをニヤニヤしながら開けてくれました。平静を装った私は「ちょっと待っててください。すぐですから」と機動隊ABに告げ、2階廊下に続く表階段を駆け上がりました。

2階の部屋に入って玄関の横にある台所の窓を開けると、階下でA及びBはパトカーから降りて辺りを油断なく観察していました。

外国人登録証を持った私は約束通りすぐに階下に降り、「おまたせしました」とパトカーの左後部にしばらく突っ立っていました。機動隊Bは「外からは開くよ」と助手席に乗り込みました。ついさっき機動隊Bが外からドアを開けたことを思い出した私は、自分でドアを開けて乗り込みました。おそらく顔は真っ赤っかだったのでしょう。法学生、実務の洗礼その5を浴びました。

恥を掻いた私は恥をかき消すように車中で怒ったように押し黙っていました。

しばらくすると運転手機動隊Aが「学生さん?」と聞いてきました。私は勝手に怒っていたので最小限の回答をしました。「はい」。

A「どこの大学?」。私「中央大学です」。A「学部は?」。私「法学部です」。A「法律学科?」。私「はい」。最小限の回答継続、怒ってるぞオーラ全開です。

機動隊AとBが目を合わせました。

機動隊A「藤本先生の授業面白いでしょう。」。(注:藤本哲也教授は犯罪学・刑事政策の権威で授業が大爆笑の連続となります。)

私「えっ」。オーラ揺らぎます。

畳みかけるように機動隊B「渥美先生は相変わらずパワフル?」。(渥美東洋教授は刑事訴訟法の権威で、私のゼミの先生)

もう間違いありません。機動隊Aさん及びBさんは、中央大学のOBで私の先輩なのでしょう。

オーラ壊滅。「お二方は、先輩ですか?」。

後ろを振り向いた機動隊B先輩「そうだよ。」

機動隊A先輩「中大法学部生が、警察にひっかかっちゃあダメだよ」と、法学生、実務の洗礼その6を浴びました。

私「すみません。気を付けます」。後は中央大学の近況等ずっと3人で話していました。

 

高井戸警察署についた私はA先輩及びB先輩に感謝の挨拶をして自分の取調室に戻りました。

係長に外国人登録証を渡すと係長はそれをコピーしていました。これで始末書ファイルは完成です。

 

やっと大人の世界から解放された私は、法学部の光源氏とともに、自転車無灯火を問題にしない朝日の上る新宿に向かってペダルを踏み込みました。

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